携帯トイレの基本 1日5回と、規格適合という目印
災害時の備えのなかで、後回しにされがちで、しかし切迫度がいちばん高いのがトイレです。水は飲まなければ我慢できますが、排泄は我慢できません。断水すれば自宅の水洗トイレは使えなくなります。
1. 1日5回という目安
内閣府(防災担当)「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(令和6年12月改定)は、次のように書いています。
1日当たり必要な便袋数の算定式:最大想定避難者数 × 5回
携帯トイレの備蓄について:「まずは、3日分を目標にしましょう」
この式で計算すると、4人家族・3日分なら 4人 × 5回 × 3日 = 60回分。1週間なら140回分です。「1袋あればなんとかなる」という規模ではないことがわかります。
神奈川県も「1日の排泄の平均回数は1人5回と言われています。携帯トイレは最低3日分、可能であれば7日分を備蓄しましょう」と案内しています。
2. 携帯トイレと簡易トイレ
環境省「災害廃棄物対策指針 技術資料」では、次のように分類されています。
| 携帯トイレ | 吸収シート方式と凝固剤等方式。「最も簡易なトイレ。調達の容易性、備蓄性に優れる」 |
|---|---|
| 簡易トイレ | ラッピング型、コンポスト型、乾燥・焼却型等。「し尿を機械的にパッキングする。設置の容易性に優れる」 |
家庭の備蓄で中心になるのは、既存の便器に袋をかぶせて使う携帯トイレです。内閣府ガイドラインは「吸水シートや凝固剤で水分を安定化させる」「消臭剤がセットになっているもの」と記述しています。
3. 2025年に始まった「規格適合評価」
携帯トイレを選ぶ手がかりとして、比較的新しい目印があります。特定非営利活動法人 日本トイレ研究所による「携帯トイレに関する規格 Ver.1.0」と、それにもとづく規格適合評価です。適合評価は2025年6月に始まり、適合製品リストが公開されています。
| 評価項目 | 構造(必須)/吸収性能(必須)/表示(必須)/防臭性能(任意) |
|---|---|
| 吸収性能の要件 | 人工尿400mLを吸収できること |
| 指定試験機関 | 一般財団法人茨城県薬剤師会検査センター/一般財団法人日本品質保証機構 |
| 申請 | 事業者による任意申請制 |
① これはJIS規格ではありません。日本トイレ研究所(NPO法人)が独自に定めた民間の任意規格です。当編集部が日本産業標準調査会(JISC)・日本規格協会の検索を行った範囲では、災害用携帯トイレに該当するJIS規格は見あたりませんでした。
② 「日本トイレ研究所」(NPO法人)と「日本トイレ協会」(一般社団法人)は別の団体です。この規格を持っているのは前者です。
また、防臭性能は任意項目です。適合品であっても防臭性能の評価を受けていない製品がありうる、という点は知っておいてよいでしょう。
4. 使ったあとの捨て方
内閣府ガイドラインは避難所運営について「使用済み携帯トイレは、長期間避難所に留めることがないよう、定期的な回収を手配」と記述しています。家庭での廃棄については、神奈川県が「使用済みの携帯トイレは自治体指定の場所に捨ててください」と案内しています。
全国一律の排出区分を示した国の文書は、当編集部が確認した範囲では見あたりませんでした。お住まいの自治体のルールに従ってください。平常時のうちに、自治体のごみ分別ページで確認しておくことをおすすめします。
5. 選ぶときに見るところ
- 回数——「◯回分」の表示。必要数(人数×5回×日数)と照らします。
- 1回あたりの価格——セット内容がまちまちなので、総額では比べられません。
- 規格適合の有無——日本トイレ研究所の適合製品リストで確認できます。
- 保管期限——長期保管をうたう製品があります。表示を確認してください。
- 防臭袋が付くか——防臭性能は規格上は任意項目です。
まとめ
必要数は人数 × 1日5回 × 日数。まずは3日分、できれば7日分。選ぶときの新しい目印として日本トイレ研究所の規格適合評価がありますが、これはJISではなく民間の任意規格です。捨て方は自治体ごとに違うので、事前確認を。
- 内閣府(防災担当)「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(令和6年12月改定)
- 神奈川県「携帯トイレを備蓄しましょう」(2026年6月15日更新)
- 特定非営利活動法人 日本トイレ研究所「携帯トイレに関する規格適合評価」「携帯トイレに関する規格 Ver.1.0 適合製品リスト」
- 環境省「災害廃棄物対策指針 技術資料【技1-20-17】し尿・生活排水の処理」