赤ちゃん・高齢者・ペットがいる家の備え
備蓄の一般論は、家族構成が標準的であることを前提にしていることが多いものです。しかし赤ちゃんのミルク、高齢の家族の常備薬、ペットのフード——これらは代わりがきかないという点で、水や米とは性質が違います。公的資料が実際に挙げている品目を確認します。
1. 乳幼児
農林水産省 近畿農政局の資料には、次の記載があります。
- 母乳が不足する場合に備え、粉ミルクと哺乳ビンの備蓄
- 「飲料水は、調乳用に多めに備えましょう」
- 離乳食は「ライフラインが停止し、調理できない」ため、ビン詰やレトルトの離乳食を少なくとも2週間分備蓄することが推奨
- 品目:粉ミルク、哺乳ビン、紙コップ、使い捨てスプーン、飲料水、離乳食(ビン詰・レトルト)
東京防災の「備蓄ユニット」では、乳幼児向けにスティックタイプの粉ミルク約20本(アレルギー対応)、離乳食1週間分以上(アレルギー対応)、お尻拭き1パック、おむつ約70枚という数量が示されています。
2. 高齢の家族
同じく近畿農政局の資料より。
東京防災の備蓄ユニットでは、高齢者向けにやわらかい食品・高齢者用食品を1週間分以上、常備薬(処方薬)を1か月分、補聴器用電池6個、入れ歯洗浄剤約30錠が挙げられています。処方薬の1か月分という数字は、備蓄の一般的な日数(3日〜1週間)とは桁が違います。薬は日数の議論の外にあると考えたほうがよさそうです。
なお、処方薬の備蓄量はご自身の判断だけで決めず、かかりつけの医師・薬剤師にご相談ください。
3. 要配慮者向けのガイド
農林水産省は「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」(平成31年3月)を公開しています。対象は乳幼児、高齢者、慢性疾患・食物アレルギーの方です。東京防災も「病気の方、療養食が必要な方、アレルギー体質の方についても同様です」として、必要不可欠なものを日頃から多めに備えるよう書いています。
食物アレルギーがある場合、避難所で配られる食料が食べられない可能性があります。自分で確保しておく必要性が、他の家庭より高いという前提で量を決めることになります。
4. ペット
環境省「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」(平成30年9月)は、備蓄品を優先順位つきで示しています。
- 優先順位1(健康・命に関わるもの)——療法食、薬/ペットフード、水:少なくとも5日分(できれば7日分以上)/キャリーバッグやケージ/予備の首輪、リード/ペットシーツ/排泄物処理用具、トイレ用品/食器
- 優先順位2(情報)——飼い主連絡先・緊急連絡先/ペットの写真/ワクチン接種状況、既往症、投薬情報
- 優先順位3(ペット用品)——タオル、ブラシ、ウェットタオル/ビニール袋/お気に入りのおもちゃ/ガムテープ、マジック
人間の備蓄が「3日〜1週間」であるのに対し、ペットは「少なくとも5日分、できれば7日分以上」と、はじめから長めに設定されています。
あわせて、同ガイドラインには誤解されやすい点についての明記があります。
同行避難ができることと、避難所で一緒の部屋にいられることは別です。お住まいの自治体がペットの受け入れをどう定めているかは、事前に確認しておく必要があります。
5. 女性
東京防災の備蓄ユニットには、女性向けとして生理用品 約60個という数量が示されています。
まとめ
家族に合わせた備えは、「代わりがきかないもの」から先に決めるのが確実です。ミルク、処方薬、療法食、アレルギー対応食——これらは避難所で手に入るとは限りません。一般的な日数の目安より多めに、というのが公的資料に共通する考え方です。
- 農林水産省 近畿農政局「災害時に備えて食品の家庭備蓄を始めよう」(令和元年8月)
- 農林水産省「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」(平成31年3月)
- 東京都「東京防災」備蓄ユニット
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」(平成30年9月)