避難情報とハザードマップ 2026年に変わったこと
備蓄をどれだけ揃えても、避難の判断を誤れば意味がありません。ここでは、避難に関わる制度を一次情報で整理します。2026年に大きな変更があった分野です。
1. 警戒レベル1〜5
内閣府「避難情報に関するガイドライン」および気象庁の説明にもとづくと、次のようになります。
| レベル | 名称 | 出す人 | とるべき行動 |
|---|---|---|---|
| 1 | 早期注意情報(警報級の可能性) | 気象庁 | 災害への心構えを高める |
| 2 | 注意報(大雨・洪水・高潮等) | 気象庁 | ハザードマップ等で避難行動を確認 |
| 3 | 高齢者等避難 | 市町村長 | 危険な場所から高齢者等は避難 |
| 4 | 避難指示 | 市町村長 | 危険な場所から全員避難 |
| 5 | 緊急安全確保 | 市町村長 | 直ちに安全確保 |
2. 2021年に「避難勧告」はなくなりました
令和3年の災害対策基本法改正(令和3年法律第30号、令和3年5月20日施行)により、避難勧告と避難指示(緊急)が「避難指示」に一本化されました。内閣府の資料は「これまでの避難勧告のタイミングで避難指示を発令する」と説明しています。つまり避難指示は、以前の避難勧告と同じタイミングで出るようになった、ということです。
あわせてレベル5「緊急安全確保」が新設され、レベル3は「避難準備・高齢者等避難開始」から「高齢者等避難」に改称されました。
3. 2026年5月29日から、情報の名前が変わりました
内閣府は令和8年3月17日に「避難情報に関するガイドライン」を改定(令和8年3月版が最新)。これは、気象庁が令和8年(2026年)5月29日から新しい防災気象情報の運用を始めたことへの対応です。
気象庁の報道発表によれば、「情報名称に警戒レベルの数字をつけて発表することで、市町村等が発令する避難情報や住民がとるべき避難行動との対応が分かりやすくなります」とされています。
| レベル | 大雨 | 河川氾濫 | 土砂災害 | 高潮 |
|---|---|---|---|---|
| 5 | レベル5大雨特別警報 | レベル5氾濫特別警報 | レベル5土砂災害特別警報 | レベル5高潮特別警報 |
| 4 | レベル4大雨危険警報 | レベル4氾濫危険警報 | レベル4土砂災害危険警報 | レベル4高潮危険警報 |
| 3 | レベル3大雨警報 | レベル3氾濫警報 | レベル3土砂災害警報 | レベル3高潮警報 |
| 2 | レベル2大雨注意報 | レベル2氾濫注意報 | レベル2土砂災害注意報 | レベル2高潮注意報 |
気象庁の説明では、これまでの「大雨警報」は「レベル3大雨警報」という名称になります。レベル4に相当する「大雨危険警報」は新設された名称です。
なお、この4種類以外の特別警報・警報・注意報(暴風・波浪・大雪など)は、これまでと変わりません。また、市町村が出す避難情報(高齢者等避難・避難指示・緊急安全確保)の名称も変わっていません。変わったのは気象庁が出す情報の名前です。
4. 緊急地震速報
気象庁の説明によれば、緊急地震速報(警報)は気象業務法上の「地震動警報」にあたり、「地震波が2点以上の地震観測点で観測され、最大震度が5弱以上または最大長周期地震動階級が3以上と予想された場合」に発表されます。強い揺れが予想される地域名(全国約200地域)が発表され、具体的な予測震度値や猶予時間は発表されません。
震度6弱以上または長周期地震動階級4以上が予想される場合、緊急地震速報(警報)は特別警報に位置づけられます。
5. ハザードマップ
ハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)は国土交通省が運営しています(水管理・国土保全局防災課、および国土地理院応用地理部)。2つのツールがあります。
- 重ねるハザードマップ——「洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報、道路防災情報、土地の特徴・成り立ちなどを地図や写真に自由に重ねて表示」
- わがまちハザードマップ——市町村が作成・公開したハザードマップへのリンク集
ハザードマップには法的な裏づけがあります。水防法第14条は、国土交通大臣・都道府県知事が「想定最大規模降雨により当該河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域を洪水浸水想定区域として指定するものとする」と定め、同条第4項で公表を義務づけています。そして第15条第3項が、市町村長に対し「印刷物の配布その他の必要な措置を講じなければならない」と定めています。これが各世帯に配られるハザードマップの根拠です。
また、2020年(令和2年)8月28日施行の宅地建物取引業法施行規則第16条の4の3第3号の2により、不動産取引の重要事項説明で水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明が義務化されました。売買・交換・貸借のすべてが対象です。国土交通省は運用上の留意点として「浸水想定区域外であっても水害リスクがないと誤解させないよう配慮すること」を挙げています。
6. 住まいの耐震——1981年と2000年
木造住宅の耐震性は、建てられた時期で3つに分かれます。
- 〜1981年5月31日——旧耐震基準
- 1981年6月1日〜2000年5月31日——新耐震基準(施行日は1981年6月1日)
- 2000年6月1日〜——木造住宅の仕様規定が明確化(接合部の仕様、四分割法による耐力壁の配置等)
国土交通省の「熊本地震における建築物被害の原因分析」では、「現行規定(接合部の仕様等の明確化)が適用された平成12年6月以降」の木造建築物で倒壊率が低かったことが示されています。
耐震診断・改修については、国土交通省が「国と地方公共団体では、協力して様々な支援制度を講じています」としています。国が直接個人に交付するのではなく、市区町村の窓口に申請するという仕組みです。補助率や条件は自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村にご確認ください。
7. 安否確認——171とweb171
NTT東日本・NTT西日本が運用する災害用伝言ダイヤル(171)は、「災害の規模が大きく、被災地の一部の地域において、被災地への通話ができない状況になった場合」に提供が開始されます。
| 使い方 | 171にダイヤル→ 録音は「1」、再生は「2」 |
|---|---|
| 入力する番号 | 被災地の方は自分の電話番号、被災地以外の方は被災地の方の電話番号。いずれも市外局番から。 |
| 録音時間 | 1〜30秒程度 |
| 蓄積件数 | 電話番号1つにつき20件程度 |
インターネット版の災害用伝言板(web171)(https://www.web171.jp/)もあり、171と相互に連携しています。
あわせて、公衆電話は「災害救助法の適用が想定される規模の災害によって、交通機関の遮断等の社会的混乱が発生し、関係事業者における携帯電話及び固定電話の通話規制が発生する可能性がある状況」と判断される場合に無料化されます。緑色の機種は、硬貨またはテレホンカードを入れてからダイヤルします(入れた硬貨・カードはそのまま戻ります)。消防庁の持ち出し品リストに「現金 10円玉」が入っているのは、このためです。
まとめ
避難の基準はレベル4「避難指示」。レベル5は待つものではありません。2026年5月29日から気象庁の情報名称にレベルの数字が付きました(避難情報の名称は変わっていません)。ハザードマップは国土交通省のポータルと自治体配布のもので確認。安否確認は171を、体験利用日に一度試しておく。
- 内閣府(防災担当)「避難情報に関するガイドライン」(令和8年3月)/「『避難情報に関するガイドライン』の改定について」(令和8年3月17日)
- 気象庁「5月29日(金)から、新たな防災気象情報の運用を開始します」(令和8年4月14日)/「新たな防災気象情報の全体像」
- 気象庁「警戒レベルと防災気象情報」「緊急地震速報(警報)及び(予報)について」
- 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第60条/令和3年法律第30号
- 水防法(昭和24年法律第193号)第14条・第15条第3項、水防法施行規則第11条
- 国土交通省「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化」/宅地建物取引業法施行規則第16条の4の3第3号の2
- 国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」「熊本地震における建築物被害の原因分析」
- ハザードマップポータルサイト(国土交通省)
- NTT東日本・NTT西日本「災害用伝言ダイヤル(171)」「災害用伝言板(web171)」「災害時の公衆電話」