家具の転倒防止 けがの3〜5割は家具が原因
防災グッズを買い揃える前に、お金をかけずに——あるいはごく少額で——できることがあります。家具の固定です。
1. けがの原因の3〜5割
東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」(令和6年1月発行)には、次の記載があります。
同庁の電子学習室でも「近年発生した大きな地震によるけが人のうち、約3割から5割の人が家具類の転倒・落下・移動が原因でケガをしています」と説明されています。
つまり、地震そのものではなく部屋の中にあるものによってけがをしている人が、半数近くいるということです。備蓄は「災害のあと」に効くものですが、家具の固定は「災害のその瞬間」に効きます。
2. 基本はネジで固定
東京消防庁のハンドブックは、方法についてはっきり優先順位を示しています。
「家具をL型金具などで壁に直接ネジ固定する方法が最も効果が高い」
ここで重要なのが下地です。「壁にL型金具を用いて固定するには、間柱など壁の下地材に取り付けることが大切」とされています。石膏ボードにネジを打っても、地震の力には耐えられません。下地の位置は「下地探知用センサー等の機器、市販の専用プッシュピンといった器具、音による打診により判断できます」。
総務省消防庁も同様に、「固定のための金具にはL型金物と木ネジを用い」「家具の上部ならどこでも良いというわけではなく、両端部分の、しかも家具自体の桟が確実に入っている位置に金具を取り付けましょう」と説明しています。家具側にも下地(桟)があるので、そこを狙う必要があるわけです。
家具の位置を自由に決めたい場合の方法も紹介されています。「家具の高さに合わせて、横木を壁の桟に取り付けます。その横木に、L型金物で家具を固定するわけです」。
3. 突っ張り棒(ポール式)を使う場合
賃貸住宅などで壁にネジを打てない場合、突っ張り棒式の器具を使うことになります。東京消防庁の指示は明確です。
ポール式単体では不十分で、上(ポール)と下(ストッパーまたはマット)の両方で押さえる、という考え方です。あわせて「できるだけ奥に取付け」、そして天井に十分な強度があるかを確認する必要があります。天井が弱いと、突っ張った力で天井のほうが負けてしまいます。
ハンドブックに挙げられている器具の種類は、L型金具、ベルト式、チェーン式、プレート式、ポール式です。
4. 窓ガラスの飛散防止フィルム
ハンドブックには、貼り方についても記載があります。
- 「ガラス戸の両面にはることにより飛散防止効果が高くなります」
- 片面のみの場合は「外側のガラス面に貼ってください」
- 施工は「霧吹きなどで、ガラスとフィルムに十分な水を吹きかけて貼付し」
停電・断水のなかで割れたガラスの上を歩くことになると、けがのリスクが跳ね上がります。寝室の窓と、避難経路になる場所を優先するとよさそうです。
5. 部屋の配置で減らせるもの
器具を使わなくてもできることがあります。
- 寝ている場所の頭側に、倒れてくるものを置かない
- 出入口をふさぐ位置に背の高い家具を置かない——閉じ込められると避難できません
- 重いものを高い場所に置かない——落下物になります
- 本棚・食器棚の扉に開き止めを付ける——中身が飛び出すのを防ぎます
まとめ
地震のけがの約3〜5割は家具類が原因(東京消防庁)。対策の基本はL型金具で壁の下地にネジ固定。ネジが打てない場合はポール式+ストッパー/マット式の併用で上下から。飛散防止フィルムは両面、片面なら外側です。
- 東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」(令和6年1月発行)
- 東京消防庁 電子学習室/「地震時の危険」
- 総務省消防庁「地震による家具の転倒を防ぐには」