明かりと情報の備え 乾電池の落とし穴
停電したとき、明かりと情報は暮らしの土台になります。そしてその土台を支えているのが乾電池です。ここでは、意外と知られていない電池の話を中心にまとめます。
1. 消防庁のリストに載っている明かり・情報の道具
総務省消防庁のチェックシートには、次のものが挙げられています。
- 非常用持出品——懐中電灯、携帯ラジオ、予備の乾電池
- 備蓄品——ランタン
懐中電灯は一方向を照らす道具、ランタンは部屋全体を照らす道具です。用途が違うので、両方あると生活の質が変わります。東京防災の持ち歩き用リストには、両手が空くヘッドライトも挙げられています。
2. 新しい電池と古い電池を混ぜてはいけない
一般社団法人電池工業会は、次のように注意を促しています。
「銘柄や種類の異なる電池、また、サイズが異なる電池を混ぜて使用すると、それぞれの電池の性能が違うため、液もれ・発熱・破裂・発火の原因となります」
「電池の残量がなくなった後もこの状態が続くと、電池に負担がかかって液もれが起こりやすくなります」
備蓄の文脈では、この話が効いてきます。「使いかけの電池を非常用にとっておく」というやり方は、液漏れのリスクを抱え込むことになります。予備は新品を、まとめて交換する前提で用意するのが安全です。
3. NITEが集計した電池事故
NITEは平成24年7月19日、電池による事故について注意喚起を公表しています。
原因区分A(設計・製造・表示等に問題)252件(45.3%)、誤使用・不注意29件(5.2%)。
資料には、新旧混用による過放電で液漏れが生じた事例、逆向きに入れたことで内圧が上昇し「安全弁が作動し充電された電池が内部圧力により液漏れが発生する」事例が記載されています。向きを間違えて入れるという、誰にでも起こりうる操作が事故につながっています。
4. 「使用推奨期限」に統一基準はありません
乾電池のパッケージや本体には「06-2032」のような表示があります。2032年6月という意味です。ところが、この期限の決め方には現在、統一された基準が存在しません。
電池工業会の説明によれば、従来のJISは「12か月貯蔵後の最小平均持続時間(MAD)」という性能基準にもとづいて使用推奨期限を規定していましたが、2022年のJIS改正で削除されました。国際規格IECが期限に関する性能要求を定めていないため、WTO/TBT協定との整合から削除された、という経緯です。
つまり、A社の「10年」とB社の「10年」は、同じ試験方法で出された数字とは限りません。ブランドをまたいで期限の年数だけを横並びで比べることには、限界があるということです。当サイトおよびアプリでも、この点は「各社の自社基準による表示」と注記したうえで扱います。
5. ラジオについて
停電・通信障害のとき、ラジオは電波が届けば情報が入ります。消防庁のリストにも携帯ラジオが挙げられています。手回し充電やソーラー充電が付いた製品もありますが、内蔵充電池を積んでいるものはリチウムイオン電池の注意点が当てはまります(こちらを参照)。乾電池でも動く製品なら、電池を交換すれば使い続けられるという利点があります。
6. 選ぶときに見るところ
- 電池の種類と本数——家じゅうの機器で電池サイズをそろえておくと、備蓄が単純になります。
- 点灯時間——製品表示の時間。明るさの設定で大きく変わります。
- 使用推奨期限——各社の自社基準による表示であることを前提に。
- 1本あたりの価格——本数がまちまちなので、パック価格では比べられません。
まとめ
予備の乾電池は新品をまとめて。使いかけを残さない。混ぜない。そして使用推奨期限は各社の自社基準なので、年数の横並び比較には限界があります。
- 総務省消防庁「非常用持出品チェックシート」「備蓄品チェックシート」
- 一般社団法人電池工業会「一次電池の安全で正しい使い方」「電池の規格について」
- NITE「電池による事故の防止について(注意喚起)」(平成24年7月19日)
- 東京都「東京防災」